ベラビスタ スパ&マリーナ 尾道
改修:中村拓志
瀬戸内海を見下ろす丘の上に建つ、名建築家が手掛けたラグジュアリーホテル。
客船「ガンツウ」や、水陸両用機「せとうちシープレーンズ」といった瀬戸内における新しい体験型観光の拠点となる尾道市の浦崎。その瀬戸内海を見下ろす丘の上に建つラグジュアリーリゾートホテルが「ベラビスタ スパ&マリーナ 尾道」だ。元々は、造船会社の船主をもてなすための迎賓館だった建物を、2007年ホテルに改修し一般に開放しているものだ。2010年にスタートした「リボンチャペル」の設計から、建築家・中村拓志によるロビー、客室のリノベーションやダイニングなどの整備が行われている。
ホテルのエントランスを入るとその軸線上、視線の先にロビー、デッキと一体となった瀬戸内の海が出迎えてくれる。ロビーを抜けるとこのホテルの顔となる中村がデザインした「ザ・デッキ」が広がる。この「ザ・デッキ」上にある景色をトリミングするベンチは、景色を見るだけでなく窓辺の体験として楽しむ場を提供している。この窓はラウンジ内部にまで引き込まれ、ライブラリーやカフェとなり徹底した内外との一体感が生み出されている。暖炉のある「サンクン・リビング」など床面の絶妙の高低差による視線の操作、多彩な素材の扱いや家具、調度の選定にいたるまで、訪れる人に非日常のリゾート感を高める、巧みな演出の数々を見ることができる。
通常でも50㎡の広さを持つ客室は全室がオーシャンビュー。なかでも最上級のフラッグシップルームとなる「ザ・ベラビスタ メゾネット・スパスイート」は既存建物の2層、6室をつなげ、2層吹抜けとなっている。天蓋付きベッドルーム、展望風呂、岩盤浴、トリートメントルームを備えた瀬戸内のやわらかい光あふれる豊かな空間に仕立て上げられ、中村の自然現象を室内に取り込むという思想を具現化している。(text-Jiro Tsukamoto)