湊のやど 出雲屋敷
2013
改修:中村昌生
茶室研究の大家がリノベーションした、本格的な日本建築に泊まる。
江戸時代、尾道の山手には神社仏閣以外の建物を建てる事は許されなかったという。そのなかで特例的に建てることが許されたのが出雲屋敷とよばれたこの建物。かつては出雲国松江藩の役人が綿や御用塩、銀などの交易のために滞在する詰め所として使われたという。
長い時を経た2013年、茶室をはじめ数寄屋建築の研究における第一人者として知られた建築史家・中村昌生が、江戸時代に建てられたというこの建物を一棟貸しの宿泊施設として再生させた。この地に溶け込み尾道の景観資源でもある建物の外観、茶室、庭と一体となった座敷をその深い見識を持って丁寧に修復しながら、水回りなどの設備の近代化と、海外の人でも無理なく生活が送れることを意識した椅子座のリビングを設けるなど今日的な改修を行っている。
月見台を持つ「月」と呼ばれる庭とひと続きの一階の座敷、江戸時代のものと言われる茶室をはじめ、決して一朝一夕には作り出すことのできない尾道の貴重な遺産の中で暮らすように滞在する。この贅沢を愉しみながら西国の要衝の地として古くから栄えた往時の尾道に思いを馳せてみたい。(text-Jiro Tsukamoto)
広島県尾道市東土堂町11-12
TEL 0848・24・6669(LOGレセプションデスク 9:00-20:00)
同じ「湊のやど」の島居邸の隣に建つ。
敷地はLOGともつながっていて行き来ができる。
宿泊者のみ見学可。