建築家・中村拓志による一連の「ベラビスタ スパ＆マリーナ 尾道」での最初の作品。瀬戸内の島並みを望むホテルの敷地内に建つ高さ15.26mのチャペルだ。その名の通りリボンが絡み合うような姿は今やこのホテルのシンボルとなっている。らせんによって形づくられたこのチャペルは、単独では不安定な「らせん」を2つ重ね、支えあわせることで一つの構造体として成立させている。そして場所によって幅を変化させた「らせん」が互いに絡むことで屋根や、庇、壁となってチャペルの空間を形成するという、世界でも類のない、純粋に動線だけでできた建築となっている。

2本の「らせん」は新郎と新婦それぞれの人生であり、やがて出会い、ともに歩む。そんなロマンチックなストーリーを見事に構造、空間に重ね「結婚」そのものを表現している。2本の「らせん」は4カ所で結合され、内側の螺旋が鉛直力をささえている構造。軽やかなこの構造体は、免震装置の導入、自重による変形を見越した形状の算出など大胆で高度な構造計画によって実現された。こうした構造計画における架構や、眺望や日射しを配慮した「らせん」の形状の巧みさを、知恵の輪をとくように実際に見て読み解くのもアーキツーリズムならではの楽しみのひとつだ。(text-Jiro Tsukamoto)