松堂
2014
設計:藤森照信+大嶋信道
屋根から松の木が⁉ ビックリ建築の名手、藤森照信デザインの寺建築。
神勝寺の総門をくぐると、特徴的なトンガリ屋根の建物が突如現れる。よく見ると屋根の頂部には赤松が植えられている・・・。これは設計した建築家自らが「松堂(しょうどう)」と名付けた神勝寺の受付・寺務所棟である。手がけたのは建築史家であり建築家でもある東京大学名誉教授の藤森照信。有機的な素材や植物を用いた、様式を知り尽くしたうえで様式にとらわれない独自の作風で世界的に知られる、ちょっと変わった建築家である。
参拝者を招き入れる部分には回廊がめぐらしてある。ただし柱に使われている木はY字型に枝分かれしていたりと、かなり奇抜な感じである。これらの柱は、近くの山に藤森自らが職人と一緒に入り、枝分かれした木を探し出し、伐採を指示し切り出してきた赤松だ。外装は、藁を練り込んだ土壁のような仕上げになっていて、コテの跡がわざとくっきり荒っぽく残っている。屋根には不揃いに曲げられた銅板は葺かれているのだが、これは藤森がワークショップを主催・開催し、お寺の職員やボランティアがひとつひとつ手作業で加工したものだ。建物内部は展示・ショップ空間になっていて、カラマツの大柱を中心に、白い漆喰で仕上げられている。国籍不明だが、なぜか和や懐かしさを感じさせる、不思議な現代建築なのである。(text-Jiro Tsukamoto)
広島県福山市沼隈町大字上山南91
神勝寺内 TEL 084-988-1111(寺務所)
拝観時間 9:00~17:00(最終受付16:30)
見学には拝観料1200円が必要。
JR福山駅より車で約30分。