©せとうちクルーズ

ガンツウ

2017

設計:堀部安嗣

一生に一度は体験したい! 建築家が手掛けた「せとうちの海に浮かぶ、ちいさな宿」。

瀬戸内海を1泊〜3泊かけクルーズするという新しいコンセンプトの客船。「せとうちの海に浮かぶ、ちいさな宿」とされるこの船の乗客数はわずか38名という贅沢さだ。途中寄港はせず、乗客は積載されたテンダーボートで島々や名勝地を訪れる。

 

乗客に自分の家のような安らぎをもたらすとともに内部から瀬戸内の風景を切りとるため、深い軒をもつ切妻屋根が架けられている。これは沿岸のまちなみの家々との調和をはかり、瀬戸内の風土や文化と一体となった船をめざしたいという建築家・堀部安嗣の思いの現れでもある。船体のシルバーも柔らかい風景に溶け込むよう意図されたもの。電気推進システムによる驚くべき静寂性の中、切り取られた瀬戸内の風景がゆっくりと動く。

 

設計した堀部は、船という動く乗り物ゆえに、四角の窓をつくることすら構造的な検証を必要とするなど、建材の選定にはじまり、照明器具の設置などでも建築とは異なる制約を受けたという。こうした建築と造船の困難な融合を、建築家と高い技術をもつ造船会社の「瀬戸内のもつ魅力を伝えたい」という志によってわずか2年で乗り越え、就航させている。めったに体験できない堀部作品のあたたかさにつつまれながら、静かに瀬戸内海を旅するというなんとも豊かな時間を過ごすことができる宿、ガンツウ。実に、一生に一度はぜひ体験してみたい船である。(text-Jiro Tsukamoto)

広島県尾道市浦崎町1364-6(ベラビスタマリーナ)

ガンツウが発着するベラビスタマリーナには、SOFU パスタ&カフェなど一般でも利用可能な飲食店もある。

乗船客以外は桟橋に近寄ることはできないが、桟橋に停泊中であれば、マリーナから遠目だが 外観のみ見学することができる。

乗船の申込など詳細はHPまで。

https://guntu.jp/