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尾道市美術館

2003

改修・増築設計:安藤忠雄

尾道の丘の上に建つ、巨匠・安藤忠雄が手掛けた美術館。

のどかな尾道らしい街なみに溶け込む山麓駅から、ロープーウェイにのりこむ。尾道水道や天寧寺三重塔を眼下に眺め、わずか三分でたどり着くのがこの町のシンボルともいえる千光寺公園だ。公園には瀬戸内の魅力を凝縮したような絶景が堪能できる展望台や、文学のこみち、源満仲が再興した千光寺など、みどころがいろいろとある。その千光寺公園の観光スポットのひとつが尾道市美術館。時代、ジャンルを超え、広範にわたる芸術と尾道にゆかりのある作家の作品を紹介する市立美術館だ。1980年に開館し、2003年に建築家・安藤忠雄が改修、増築した。

 

限られた敷地の中で計画された増築部分は庇(ひさし)をもったガラススクリーンの外壁の中に、安藤の特徴である美しい打放しコンクリートでつくられた展示室が挿入される構成だ。これは安藤の代表作のひとつアメリカ・テキサス州にある「フォートワース現代美術館」(2002年開館)などでも試みられているもの。この増築部分がすでに尾道の風景に溶け込んでいた西郷寺本堂を模したという本瓦葺き寄棟屋根をもつ既存の建物を引き立て、古いものと新しいものを対比させ、豊かな瀬戸内の自然と街並みに溶け込ませている。

 

さらに増築部分と旧館、ガラススクリーンと展示室の隙間といった随所に「余白の空間」が与えられている。そこには坪庭のように緑が挿入され、チャールズ&レイ・イームズやエーロ・サーリネンといったデザイナーによる名作チェアの数々が置かれ、来館者にとっての「隠れ家」のような場が用意されている。展示や空間を楽しむだけではなく、尾道水道を一望する眺望、身近な自然や街並み、そして思索を楽しむ美術館を提案している、世界のANDOの小品だ。(text-Jiro Tsukamoto)

  • 左に見えるコンクリートの建物が安藤忠雄による増築部分。©SETOUCHI | ARCHI-TOURISM
  • 美術館のエントランス。©SETOUCHI | ARCHI-TOURISM
  • 安藤忠雄によるスチール×ガラス×コンクリート、3つの素材のコンビネーション。©SETOUCHI | ARCHI-TOURISM
  • 安藤忠雄の代名詞、コンクリートの壁。光による陰影が美しい。©SETOUCHI | ARCHI-TOURISM
  • 千光寺の展望台より、美術館を見下ろす。©SETOUCHI | ARCHI-TOURISM

広島県尾道市西土堂町17-19 千光寺公園内

TEL 0848-23-2281

開館時間 9:00〜17:00(入館は16:30まで)

入館料:310円

祝日以外の月曜休・展示替え期間

※特別展の場合、開館日変更あり

http://www.onomichi-museum.jp