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今治市公会堂/市庁舎 今治市民会館

今治市公会堂/市庁舎(1958)

今治市民会館(1965)

設計:丹下健三

世界のTANGEが、自らの故郷につくったモダニズム建築。

日本人としてはじめて世界的な活躍をみせた建築家・丹下健三が幼少期を過ごした愛媛県今治(いまばり)市。1950年代から丹下はこの地で初期の作品となる公会堂と市庁舎を手掛けるなど、丹下作品の集積地として知られる。

 

1958年に手がけた公会堂、市庁舎は今治港から東西にのびる大通りとつながる都市の中心として市民広場を形成すように配置されている。市民活動の場として同時代の広島平和記念公園の施設などで試みたピロティ(支柱で建物を持ち上げ、その下を公共スペース等にしたもの)は用いず、それぞれの建物はグランドレベルから直接広場へアクセスすることが意識された。

 

公会堂は幅27mの集会スペースを確保するために壁、屋根とも蛇腹のような折版構造を用い大スパンを実現させ、内外にその構造を露出させている。市庁舎は執務スペースの大きな空間の確保と東西の日射を遮るため、ブリーズソレイユ(日よけ)を活用した構造体をそのまま外観の表現として用い、公会堂の折版構造と呼応させている。どちらも彫りの深い壁面が瀬戸内地方の光のなかで、美しい陰翳をみせている。

 

広場の南側にある市民会館(1966)は同じく丹下が公会堂だけでは対応できなくなった市民活動の場として手がけたもの。これにより3つの建物によって囲まれた現在の広場が形づくられた。1、2階は広場とのつながりを確保するために透過性のあるガラスのファザートを持ち、3階はもともと和室だった部屋の視線を遮るために大きな庇をもつ。改変もなく長年に渡り大切に使われ、今なお戦後モダニズム全盛期の’60年代の雰囲気を伝えている。

 

市庁舎は1972年、1994年に丹下によって高層棟が増築され、公会堂は2013年に耐震工事を行い、設備も現代的に改修。瀬戸内出身の日本画家・平山郁夫による緞帳も加えられている。これら1950、60年代の丹下作品は彼を育んだ今治市によって大切に使い続けられている。貴重な初期の丹下作品を維持している今治市に敬意を払いたい。(text-Jiro Tsukamoto)

  • 公会堂の外観。蛇腹状に折り曲がった、建物側面の折版構造が特徴だ。©SETOUCHI | ARCHI-TOURISM
  • 緞帳(どんちょう)は生口島(現・広島県尾道市)出身の画家・平山郁夫のデザイン。©SETOUCHI | ARCHI-TOURISM
  • 2013年、耐震と共に客席や舞台の改修工事が行われた。©SETOUCHI | ARCHI-TOURISM
  • 公会堂内部。2013年の改修は丹下のデザインに配慮し行われた。©SETOUCHI | ARCHI-TOURISM
  • 1958年の公会堂完成当時からのコンクリートと手すり。©SETOUCHI | ARCHI-TOURISM
  • 公会堂のホワイエにある、丹下健三デザインの階段。©SETOUCHI | ARCHI-TOURISM
  • 公会堂の向かいに建つ「今治市民会館」(1965年竣工)。©SETOUCHI | ARCHI-TOURISM
  • 今治市民会館のディテール。©SETOUCHI | ARCHI-TOURISM
  • 今治市民会館の階段。美しい。©SETOUCHI | ARCHI-TOURISM
  • 今治市民会館の階段。造形的でありながら、軽やかさも併せ持つ。©SETOUCHI | ARCHI-TOURISM
  • 今治市民会館。階段のスチール製の手すり。©SETOUCHI | ARCHI-TOURISM
  • 今治市民会館。オリジナルの丹下デザインが残る貸出用の会議室。©SETOUCHI | ARCHI-TOURISM
  • 今治市民会館。壁と床にペイントされたサインが秀逸だ。©SETOUCHI | ARCHI-TOURISM
  • 今治市民会館の2階から、市庁舎、公会堂を見る。©SETOUCHI | ARCHI-TOURISM
  • 公会堂の横に、同じく丹下健三による市庁舎(1958年)と市庁舎の高層棟(1972年、1994年)が見える。©SETOUCHI | ARCHI-TOURISM

愛媛県今治市別宮町1-4-1

TEL 0898-32-5200(今治市役所代表番号)

JR今治駅より徒歩10分。

同じ敷地内に、丹下健三設計の公会堂、市庁舎、市民会館が建つ。

また歩いてすぐのところに、同じく丹下の設計による「愛媛信用金庫今治支店(旧・今治信用金庫本店)(1960年)」がある。